周囲との違いを見るたび、心に寂しい風が吹いた
私の家族は極度の貧困状態にあった。父は精神障害があり定職に就けなかったのだ。
アルバイトを転々としており、私が高校生になってからは障害者の作業所でも働いていた。
そして、はたと無職になる。
物心ついた時から父は日常的に母に暴力を振るい、それは日に日に悪化の一途をたどった。
母の脚は殴られ、紫の斑点の隙間がなくなって、もはや紫一色になった。
理由もなく突然人が変わったように激昂する父に、怯えながら暮らす日々だった。
周囲との違いは、生活の折々で明らかになる。
お小遣いやお菓子をもらえなかったり、習い事をさせてもらえなかったり。
周囲は子どもチャレンジや進研ゼミを始めたり、ピアノ教室やミニバス、バレーや野球の少年団に入ったりする。
好奇心旺盛な私は、母にあれをやりたい、これをやりたい、と懇願するのだが、その度に母は悲しい顔をする。
次のピアノの発表会で着るという、普段はちょっと着るのに勇気がいるようなひらひらのドット柄のスカート、リボンの付いたカーディガンの衣装を見せてくる友達。
音楽会でピアノを上手に弾く友達。スイミングスクールのバスがお迎えに来る友達。
それを見る度に、心に寂しい風が吹いた。
私は運動も勉強も大好きだった。
だから、自分以外の同級生が塾や通信教育で授業より先のことを習うのが置いて行かれるようでこわかったし、放課後着替えてスポーツに打ち込む友達が強烈に眩しかった。
この原稿を書きながら、あの悔しさが生々しく蘇ってくる。