夫婦関係を見直す出来事も
夫との別居が公になった後、「上沼さんやからできる」と何人もの方から言われました。それは仕方ないです。そのぶん、私は働いてきました。ご褒美やと思ってます。でも自分のほうが皆さんより偉いなんて思ってません。はっきり言って、タレントなんてそう忙しくないんです。休憩や移動の時間が長くて、収録時間はたかが知れてます。パートで働きながら家事育児をやっている人のほうがずっと偉いですよ。
別居という、形の上での大きな変化がありましたが、それとは別に夫婦関係を見直す出来事もありました。昭和22年生まれの夫は団塊の世代。「妻を褒めたら死ぬ」ぐらいに考えてるふしがあって、これまで一度も褒めたり労われたりしたことはなかったし、私もとっくに諦めてたんです。
ところが、コロナ禍でテレビやラジオの収録現場が一変、お客さんやゲストをスタジオに呼べなくなりました。人とじかに触れ合えない、お客さんの生の反応を感じられない現場は私にとって本当につらいものでした。
ある時、どうしても気持ちが上がらない仕事があって、とうとう夫に「私を励ましてくれませんか」とメールしたんです。詳しいことは書きませんでしたが、それだけで察したんでしょう。
「君の仕事は得ですよ。たくさんのファンが讃えてくれる。視聴率がよければ花が贈られてくる。僕たちサラリーマンは何十年と勤めても褒められることはまずありません。ほかの仕事だって同じ。ぜいたくを言ってはいけないよ」という返信がありました。
寄り添ってくれる時も偉そうですが(笑)、胸に響きましたね。夫は元テレビマンで、鋭い取材もしてきた人なんですが、その名残りを感じることもできました。思い切って頼ってみてよかったと思います。
後編「長寿番組の突然の終了にトロフィーをかち割って。『青春ドラマ、あれは嘘ですね。インターフォンはなりませんでした』」はこちら