撮影:小林ばく
今年、俳優デビュー10周年という節目を迎えた松坂桃李さん。ここ数年は、次々に新しい人物像に挑戦し、新境地を開いてきた。そんな松坂さんが、「権力とメディア」のせめぎ合いに真正面から斬り込んだ映画『新聞記者』に主演する。衝撃作の公開を前に、30歳の今何を思うのか。作品に込めた思いと「これから」に迫った。(構成=平林理恵、撮影=小林ばく)

20代半ばで軌道修正

20歳で『侍戦隊シンケンジャー』でデビューして今年で10年になります。ここ4、5年は、とにかくいろいろな役に挑戦し、役柄を広げることを目指してきました。セックス依存症の外科医、エキセントリックな陸軍の青年将校、残虐な殺し屋もやりましたね。昨年は、映画『娼年』で女性に体を売る男娼役を演じ、『孤狼の血』では、役所広司さん演じるヤクザまがいの刑事に反発しながらも、感化され変わっていく刑事を演じました。

デビューした頃は「イケメンブーム」だったので、僕もなんとなくその枠に入れていただき、爽やかな青年ばかりを演じていました。ブームのおかげで、そして、演じる役柄からくるキラキラしたイメージのおかげで、自分がそこにいられるということはよくわかっていた。だから、「これは一過性のものだ」と自分に言い聞かせていました。

その一方で、イメージがハマリやすい役だけを与えられ続けると、怠けてしまいそうな自分もいて。30代を見据えたら、このままではいけないと思いました。それでマネジャーさんと相談して、20代の半ばくらいから、チャレンジングな作品を選んでいく方向に軌道修正したんです。

実際に、『娼年』の舞台を経験したことが、2度目の朝ドラや『孤狼の血』につながりました。間もなく公開される映画『新聞記者』に呼んでいただいたのも、これまで挑戦してきたことがつながっているのだと思っています。

 

現場で湧き起こる感情を大切にして

映画『新聞記者』は、東京新聞・望月衣塑子記者の同名ベストセラーを原案に、「権力とメディア」「組織と個人」のせめぎ合いを描くサスペンス・エンターテインメント。日本で起きている現在進行形の事件をモデルにしたドラマが、生々しく展開していく。

事件の真相を追う記者を演じるのは、韓国の若手演技派、シム・ウンギョンさん。松坂さんは、「国民に尽くす」矜持を持った内閣情報調査室(内調)のエリート官僚という役どころだ。

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最初に脚本を読んだとき、「こんなに攻めた映画を作るのか」と衝撃を受けたことをよく覚えています。作品に対してはいろいろな意見が出てくるだろうし、見方はさまざまだろうな、とも迷いました。ただ最終的にお受けする際には迷いはなかった。仕事を選ぶときに、一番大事だと思うのは内容です。ホンがおもしろいかどうか、やってみたいかどうか。この杉原拓海という官僚の役を僕はしっかり生きてみたいと思いました。

しかも監督が、いつかご一緒できたらと切望していた藤井道人さん。そして相手役は、シム・ウンギョンさん。映画『サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』はもちろん見ていて、素敵な女優さんだなと思っていましたが、まさか自分が共演できるとは夢にも思わなかった。もう断る理由はありません。