長い黒髪をショートカットに
「演歌歌手はこうあるべきだ」というものの一つが、女性の場合、着物を着て長い黒髪をまとめてシニヨンにすることでした。私は本来、「こうでなければいけない」「これをやっちゃいけない」を守り、その枠のなかで右往左往するタイプ。けれど、多分、そういうことに疲れてきたんでしょうね。ムシャクシャすることがあったのかもしれない。
CDジャケットの撮影日に、突然「髪の毛を切りたい」と思い、そのときヘアメイクを担当してくださっていたIKKOさんに相談しました。そうしたら「いいと思う」と言ってくださって。そのまま美容室に行き、ショートに。すると今度は髪の色も変えたくなって、ブリーチしてピンクを入れました。
最初のうちは、皆さんびっくりされたみたいです。細川たかしさんは私の髪を見て、「おまえ、どうしたんだ!?」とおっしゃっていました。でも、そのうちに、吹っ切れたように、気持ちもスッキリしてきたのです。
時を同じくして、演歌以外の歌に挑戦する機会をいただけるようになりました。もともといろいろなジャンルの歌が好きだったので、心おきなく挑戦することができ、また自分の世界が広がった気がしました。
いつもと違うことをやるのには困難がつきもの。最近の歌は言葉の数も多いし、リズムの刻み方も、自分がこれまで経験してきたものとはまるで違う。「これ、音がとれない」「どこで息継ぎをすればいいの」ということはしょっちゅう。でも、何度も繰り返し練習するうちに体に馴染んでくる感覚があって、それがまた楽しいんですよね。
私は演歌が大好きです。演歌は人の心の枝葉の部分、人情の機微を歌う、とても大切なジャンルだし、ずっと歌っていきたい。と同時に、チャンスをいただけるのなら、今後も、どんなものにも挑戦していきたい、と思うのです。