筋書きは一切なし

僕の執筆方法はちょっと変わっていて、プロット、つまり筋書きを一切書かないんです。物語の先は僕の頭の中にしかないので、編集者にとっては心臓に悪い書き方かもしれません(笑)。でも、僕が本当に伝えたい、例えば信之の微妙な心の描写って、プロットには書けない。無理にプロットにしようとすると、ただ単に仲の悪い親子の話、みたいに僕が本当に伝えたい真意とずれてしまう。こういう微妙な気持ちの変化こそが、僕の小説の核であり、武器なんです。

そもそも小説でしか描けへんから、小説書いているのに、プロットってなんやねんって(笑)。コンサートとライブで言うと、ライブ作家なのかもれしれないですね。

特に最終章、あるふたりの人物が対面して互いの腹を探りあうというシーンがあるのですが、これはプロットを書いてしまっていたら、あそこまでの緊迫感は出せなかったんじゃないかな。会話ごとにその人物に成りきって、「こう言われたらこの人物はどう思うか」「こんな挑発をされたら、どう返すか」と自分が討論している気持ちになりながら筆を進めるのは、まさにライブというか、即興演奏に近い感じだったと思います。会話だけでどこまで盛り上げることができるか、自分の中ではかなり挑戦でした。

戦国時代の戦いって、どうしても合戦に焦点が当てられがちだけど、今や常識ですが、戦争において情報戦や外交は非常に重要で。それこそ、真田が使った忍びもそうですが、彼らが暗躍してイメージ戦略に一役買ったり……。だからこそ、今回はあえて合戦のバチバチのところは排除して、情報戦をメインに描きました。最終章はその集大成ともいえるのかな。この章を書くために、6章までを書いた、そんな気がします。

真田家を熱く語る今村さん
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