「特別な健康法はありませんが、〈体力が落ちたかな〉〈疲れ気味かな〉というときは、お肉を食べますね。」(撮影:宮崎貢司)
55年前、ピンキーとキラーズのボーカルとして、「恋の季節」をはじめとするヒット曲で国民的アイドルとなった今陽子さん。その後、ソロシンガーに転向、70歳になる現在もライブやミュージカルなどで活躍中だ。ところが3年前、突然病に襲われたという。大病を経て気づいた、心身のしなやかさと元気を維持する秘訣とは――
(構成=福永妙子 撮影=宮崎貢司)

<前編よりつづく

準備はとことん、本番後はスッキリ

帰国してからの日々は、レビュー、ミュージカル、ライブコンサートと、ニューヨークで学んだことがすべて役立ちました。30代、40代、50代と歳を重ねながら、仕事をするのが楽しくて。

年齢とともに体力の衰えや体の不調も出てくるといわれますが、私にはその実感もありませんでした。歌手仲間の女性たちが「キツイよね」と言っていた更年期も、私は「あれ? あったっけ?」という感じで。

私はお仕事をいただくと、資料を読み込み、歌い方を研究するなど、事前の勉強にとても時間を費やします。とことんやっておかないと心配なタイプで、ずいぶん消耗するのですが、本番を終えるとスッキリ。疲れも吹き飛ぶから不思議です。これは歳を重ねても変わりません。

歌手にとって大事なのどですが、長くお世話になっている耳鼻咽喉科の先生は、「素晴らしい声帯だ」と言ってくださいます。実際、若いときよりも今のほうが声が出ているくらい。ブロードウェイのトップクラスの先生方に、ステージでの発声や歌い方を徹底的に教えていただいたことが今につながっているのでしょう。

特別な健康法はありませんが、「体力が落ちたかな」「疲れ気味かな」というときは、お肉を食べますね。舞台やコンサートの日が近づくと精神的に追い込まれて体重も減ってきますから、そんなときこそお肉を食べると元気が回復して、本番にのぞむことができるのです。

数年前から習慣として続けているのは、ウォーキングです。1時間歩いて1万2000歩くらい。「天気もいいし、たっぷり歩こうかな」という気楽さで。お金はかからないし、このご時世、密にもならないですし。