「男女の別なく一斉に選挙権を享有すること」
『私達日本の婦人が治安警察法に由って禁錮状態に在る限り、今日のような政治的の集会に対し、私は、私の魂のみを文章に托して送る外はありません。
皆さん、此事が――即ちこの会合へ私と云う一人の日本人が、その女性であると云う条件だけで、出席することを他律的に禁じられて居ると云う事が――今日ここに普通選挙を要求せずに居られない一つの最大理由では無いでしょうか。
皆さんは納税資格に依る選挙権の制限を不法と認めておいでになります。それには何人(なんびと)も異論がありません。併し今日、それのみの撤廃を要求する普通選挙は不徹底です。自由と平等とを重ぜられる聡明な皆さんに私は熱望します。一挙して男女の性別に依る選挙権の制限をも撤廃して頂くことを。即ち私達婦人の政治的権利の喪失をも回復して頂くことを。
若し婦人参政尚早論を唱えて之に反対する人があるなら、納税資格者以外の一般男子を非愛国者の如くに見て普通選挙尚早論を唱える人々と、その不徹底論者たることに於て大差は無いと思います。
「満二十五歳以上の日本人は男女の別なく一斉に選挙権を享有すること」、私の要求する普通選挙は之です。婦人の参政権を除外した普通選挙は、政治を以て全日本人の政治たらしめようとする――愛と理性に富んだ――真の民主主義者をして満足せしめません。
私は皆さんの徹底した御努力を、特に日本婦人の現在の立場から祈ります』
※読みやすさのため、表記を新字新仮名にしています
※本記事には、今日では不適切とみなされることもある語句が含まれますが、執筆当時の社会情勢や時代背景を鑑み、また著者の表現を尊重して、原文のまま掲出します
※見出しは読みやすさのため、編集部で新たに加えています