20年の全米オープンの際、人種差別による暴力を受けた黒人犠牲者の名前が書かれたマスクを着用したのは、なおみ自身のアイデアです。親元を離れ、いろいろな立場の人と交流するようになり、学びの機会が増えたんでしょう。
黒人の血が入った自分が将来結婚したら、生まれた子どもも黒人です。いまのような差別的な社会が続けば、間違いなく未来の子どもたちが理不尽な思いをする。トップアスリートとして影響力のある自分になにができるのか、悩んだ末の行動だったと思います。「スポンサーをなくすかもしれない」「バッシングを受けるよ」といった声もあるなか、意思を通したなおみを誇らしく思います。
まりは小さいころから絵を描くのが好きで、引退後はハイブランドとのコラボレーションに参加するなど、デザイナーとして活動の幅を広げてきました。最近はさらにタトゥー・アーティストの仕事もスタート。1年以上かけてカリフォルニア州での資格を取り、著名なアーティストのいるお店でアシスタントとして働いています。
ほかにも、日本の雑誌で自分たち姉妹を主人公にした少女マンガの原作を書いたり、なおみがパーティに出る際のドレスをデザインしたり。とにかく忙しそう。(笑)
のびのびと生きる姉の姿に、今度はなおみも「テニスだけじゃなくていいんだ」と少し肩の力が抜けてきたのかもしれません。特別な人を除いて、スポーツ選手は何十年も続けていけるものではないから、セカンドキャリアを考えることも大切。
ファッションに興味があるなおみにとって、ロスに買った家はその拠点にもなるし、自分の成長のために一度は親元を離れたほうがいいと考えた気持ちは、いまとなってはよくわかります。
どんな結果になっても、自分で考えて決断したことは必ず本人のためになる。それはわが身を通じて私が一番わかっていることです。困ったときに頼ってくれればサポートするし、これからも2人には新しいことにどんどんチャレンジしていってほしいと思っています。