サイエンスは 善きものであれ

今、私の少年時代の愛読書でもあった吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が話題です。これが書かれたのは、まさに1936年、二・二六事件があった年です。時代がおかしな方向に向かっている、という時に書かれた本でしょう。

それが今また話題になっていることに、僕は注目しているんです。あの不幸な時代に向かっているかのような現代の危機感が、この本にたくさんの人をひきつけているように感じています。

僕は、科学者として人工知能(AI)一辺倒になることも危惧しています。もちろん、世の中はAIの時代ですし、介護など役に立っている現場も多い。しかし大事なのは、サイエンスとテクノロジーを混同しないことです。

サイエンスは、人類の未来にとって善きものでなければならない。目には見えない人間の感覚とAIとをバランスよく使い分けて、豊かな未来をめざしたいですね。