1914(大正3)年に誕生した宝塚歌劇団。108年目を迎えた現在、日本でもっともチケットがとりにくい公演として人気を博している。「清く正しく美しく」をモットーとする彼女たちは、タカラジェンヌとして活躍したのち、「専科」に残る以外は卒業=退団を迎えることになる。芸能界に入る、一般企業に就職する、結婚する、ビジネスを始める、資格を取る…夢の世界のその後の人生をどう生きているのか? 宝塚で得た宝物を、卒業生に聞いた。(構成◎吉田明美)
タカラジェンヌから経営者、妻、母としての現在
――100年以上の歴史を持つ、出演者が女性だけの劇団、宝塚歌劇団。
タカラジェンヌになるためには、中学3年から高校3年までの4年間だけ受験が許され、応募資格に「容姿端麗」という項目がある「宝塚音楽学校」に入り、卒業する必要がある。入学後はあらゆる芸事を授業で2年間学び、晴れて宝塚歌劇団の「タカラジェンヌ」となる。その仕事はただひとつ、舞台の上で歌を歌い、踊り、芝居をすることである。
オーケストラの生演奏で、華麗な衣装を身にまとったタカラジェンヌたちが繰り広げる宝塚歌劇。ファンにとっては、永遠の夢の世界。それだけに、彼女たちは夢を壊さぬよう、命を懸けてその世界を創り上げる。それは、舞台の外でも同じ。
しかし、夢の時間を過ごしたのち、彼女たちは皆「退団」という決意をすることになる。特殊な世界を生き抜いたタカラジェンヌの歩む第二の人生とは――。
今回登場するのは、タカラジェンヌから明治26年創業の漬物屋、赤城フーズの六代目の継承者となった遠山昌子さん。2000年に86期生として入団した遠山さんは、宙組の男役、遥海おおらとして活躍していたが、2005年に退団して、実家の赤城フーズを継ぐことを決心。現在は群馬県前橋市で、経営者、妻、母として暮らしている。