自分はたしかに人とつながっているのだ
再び灯りがともるのを待ち切れないかのように、ホールから一気に拍手が溢れ出た。
15名がステージへと戻る。拍手は強く、鳴りやまない。
3度ものカーテンコールは、音楽を通じ奏者と観客が一つになった、まさに「共生」そのものを表していたと思えた。
舞台袖に帰ってきた15名はみな、自然にこぼれる笑顔で満ちていた。
いびつで難しいアンサンブルへの挑戦の大変さを人一倍心配してくれていた矢部は、「なんとか崩れることなく終わって良かったです」と、安堵の表情を浮かべていた。神田らは「またぜひこのメンバーで集まって、再演したいです!」と嬉しそうに話してくれた。
ふだんおしゃべりするのが好きな広田が、静かに筆者の元に近寄ってきた。そして、黙ってハグをしてくれた。
のちに届いた広田のメールに書かれていたのは、「心から充実したステージでした。あれから少し気が抜けたような、共生ロスを感じています」という嬉しいメッセージだった。
孤独だったあのときを決して忘れず、集い、共に生きる。そしてこれからは、みなそれぞれの持ち場で全力を尽くしていく。心の奥底で、自分はたしかに人とつながっているのだ、という確信。
舞台袖での15人の笑顔には、そんな想いが溢れ出しているようだった。
そしてその想いが、コロナ禍の3年を生きてきた私たち一人ひとりにも共有されているのであれば、「共生へのアンサンブル」コンサートは成功だったのではないか、そう思うのである。