平野さんいわく、父親たちが悩んでいる原因の一つに「男性の育児だけが特別視されている」というものがあるそう(写真提供:Photo AC)
共働きが約7割を占める令和時代。改正介護・育児休業法により、男性育児の増加が期待される中、男性が育児をするには多くのハードルが存在します。一方で、産婦人科医として妊娠・出産・育児の現場を見てきた平野翔大さんは、父親たちが抱える悩み、今からできる解決策、そして今後望まれる社会体制について、各種メディアを通じて発信してきました。その平野さんいわく、父親たちが悩んでいる原因の一つとして「男性の育児だけが特別視されている」というものがあるそうで――。

「イクメン」という言葉の悪しき変化

文化的な一つの転換点が、2000年代後半の「イクメン」の流れだろう。

2006年にファザーリング・ジャパンが創設され、2007年頃から、女性誌や育児雑誌を中心に造語として「イクメン」が出現した。

2010年に当時の長妻厚生労働大臣が「『イクメン』『カジメン』を流行らせたい」と発言したのを機に、同年6月に「イクメンプロジェクト」が発足し、12月には新語・流行語大賞に「イクメン」がノミネートされた。

これらは男性の育児を、ネガティブなイメージから、ポジティブに捉える流れへの転換であり、2011年度の男性育児休業取得率は2.63%と急伸した。

2012年度は1.89%に低下したが、以降緩やかに2016年まで増加を続けるなど、男性育休取得率の向上にも寄与し、「育児をする男性」が少しずつ市民権を得ていく。

同時に行政も育児の両立支援に力を入れ始め、2010年には「産後パパ・ママ育休プラス」が施行され、自治体男性首長の育休取得も続いた。