少子高齢化が社会問題となっているのは、もちろん日本だけではありません。フランスのパリで一人暮らしをしている75歳以上の高齢者は、約8万4000人いるといわれています。そんななか、高齢者や生活困難者に美を提供するソシオ・エステティシャンとしてパリで活躍しているのは、ゴダール敏恵さん。そのゴダールさん「手には肌と肌の触れ合いでエネルギーを伝達する力があると確信しています」と言いますが――。
現実から目をそらし続けていた
年々、美容院でライトに照らされて鏡に映った自分と向き合うのがつらくなってきました。
明らかに自分の顔が老け、メイクも雑になっているのを実感するからです。
自分が若いころは、エステサロンにご来店くださるような美意識の高い女性たちでさえ、ファンデーションがムラになっていたり、まつ毛の生え際からかなりずれたところにアイラインが引かれていたり、口紅がはみ出していたりするのを見かけると、「こんなにいい加減なメイクで人前に出て恥ずかしくないのかしら?」「年齢を重ねると、もう外見なんてどうでもいいのかしら?」などと失礼なことを思っていたものでしたが、私も年々そうなる理由がわかるようになってきました。
決して手を抜いているわけではないのです。
視力が衰えて、自分の顔もメイクの仕上がりも細部までよく見えなくなっているのです。