放送で使うことばとしては不適切
今後、使われ続ける可能性もありますが、敬語の「誤用」であることには変わりないため、放送で使うことばとしては適切ではないでしょう。
とはいえ、尊敬語の「ご乗車になれません」は、やや堅苦しいと感じる場合もあるかもしれません。
これにかわるほかの言い方として、まず、「乗車」を動詞ではなく名詞と捉え、助詞の「は」を加えて、「ご乗車はできません」とすれば問題ありません。
また、場面によっては、相手の動作によって自分が恩恵を受けることを示す「いただく」の可能の形「いただける」を使って、「ご乗車いただけません」と言いかえることもできるでしょう。
(滝島雅子)
*参考『敬語表現』蒲谷宏・川口義一・ 坂本惠(大修館書店)
※本稿は、『NHKが悩む日本語 放送現場でよくある ことばの疑問』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
『NHKが悩む日本語 放送現場でよくある ことばの疑問』(著:NHK放送文化研究所/幻冬舎)
放送にまつわる調査研究機関であるNHK放送文化研究所。
その中の「用語班」という部署では、全国のNHK放送局からのことばの電話相談に答えている。本書ではその名回答を厳選して掲載。
大勢の人にいちばん伝わりやすい日本語がわかるとともに、放送現場の裏側にある、ことば選びの苦悩がしのばれる一冊。