痩せる父を病院に連れて行った

6月の初旬、入浴後の父を体重計に乗せた。1ヵ月間で4キロ痩せている。

高血圧や認知症の進行を遅らせる薬をもらうために、月に一度父を病院に連れて行っているのだが、予定を前倒しして医師に相談することにした。私は朝のうちに父のところに迎えに行って言った。

「パパ、私、今日時間が空いたの。一緒に病院に行こうよ。食欲が出るようにしてもらったほうが、一日楽しく過ごせるでしょ?」

父は気乗りしない様子で、返事をした。

「着替えるのが面倒だから行かない。食べなくたって元気だから問題ない」

「まあ、そう言わずに。車に乗ったら気分転換になるよ」

体力が落ちた父は、裏庭の紫陽花を見に行くのも億劫だと言った。紫陽花には「寛容」「無常」「辛抱強さ」「強い愛情」いろんな意味がある(写真提供◎森さん)

渋々病院に行った父だが、「少し脱水症状が見られる」と先生に言われたら観念して、点滴をすることになった。父が別室で点滴を受けている間、私は医師に呼ばれて、「レスパイト入院をしたほうがいい」と勧められた。

レスパイト入院とは、家族が日々の介護に疲れを感じている時に、患者を一時的に入院させて、介護者を休ませることらしい。そして、私に労りの言葉をかけてくれた。

「森さん、すごく疲れて見えますよ。大丈夫ですか?」

「父のことと、仕事が忙しくて寝る時間が少ないので、体調はあまり良くないです」

医師は、点滴が終了して診察室に戻った父に言った。

「うちは入院設備がないので、紹介状を書きますから、水分や食事を摂れるようになるまで、ちょっと入院しませんか」

父はこの先生を信頼しているから、素直に「はい」と答えてくれた。紹介状をいただいて外に出ると、午後1時。父に聞いてみた。

「昼ご飯を食べてから次の病院に行こうか?」

「いや、おなかは空いていないから、俺はこのまま行っても構わない」

私のほうは空腹だけれど、父の気が変わらないうちに紹介された病院に行ってしまいたい。車で15分ほどの距離の新たな病院に向かって、急いで車を走らせた。

(つづく)

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