大きな転機となったのは、「眼」が描けるようになったこと。それまでの切れ長の眼はスタイリッシュであるものの、視線の向きが表現しづらい難点があった。
「それで行き詰まりを感じていた頃、古い友人から『フィリピンの小さな島の子どもに絵を教えに来て』と誘われ、これまたひょいひょいと出かけていったわけです」
現地でモデル役をしてくれたエドナちゃんという大きな瞳の女の子を、子どもたちのお手本に描いていたとき、「あっ、眼が描けた! と思いました」。はやる気持ちを抑えて帰国し、主人公の眼を大きく描いた絵本『ハのハの小天狗』が完成。
物語は子ども時代、学校から帰る途中に一人でチャンバラごっこをした時の思い出がもとになっていた。
「初めて日本を舞台にしたこと、それまで絵本の世界になかった痛快時代ものを描けたことが自分でもすごく楽しくてね」