そうして、さまざまな出会いを通じて絵本作家としての歩みを進めてきた飯野さん。編集者との打ち合わせのたびに今までの道のりを語っていたところ、「自叙伝を出しませんか」と言われ、今年4月には、『人生はチャンバラ劇』を刊行した。

紆余曲折の人生をともに歩んでくれたのは、セツ・モードセミナー時代に知り合った妻のゆう子さん。一人娘に恵まれ、現在は孫が2人いる。ゆう子さんはテキスタイルのデザインを手がけてきたこともあって、色の感覚が抜群だという。

「僕が色を塗っていると、後ろから『なぜこの色をここに使わないの』なんて鋭いことを言う。若い頃はそれでケンカになったりしたけれど(笑)、冷静になると彼女の言う通りなんです。だから今も迷った時には見てもらうようにしています」

秩父の山里を出て、半世紀以上。今後もふるさとの自然を思い、人間が本来持つ土着のエネルギーを絵本に込めていきたいと語る飯野さん。

「ファンタシーといっても、荒唐無稽なだけじゃ面白くない。登場人物がどういう人間、動物なのか。リアルな暮らしや生き方に根差した絵本を、楽しみながら作っていきたい。それを『面白い!』と言ってくれる人が一人でも多くいてくれたら、幸せですね」