ここでつくづく思うのは、歌舞伎の家に生まれた子が、遊びたいのを我慢してさまざまな稽古事に通い、長じて後輩を厳しく指導し、その恩を感じたその後輩がのちに先輩の子の指導に当たる。これが伝統文化の真髄と言えるだろう。

――門閥制がどうのとかよく言われるけど、やっぱり生まれた時から楽屋の空気を吸って育った者と、高校を卒業してから役者を志す者とでは、ハンデがあって然るべきだと思うんですね。別に役者のDNAがなくっても、たとえば玉三郎さんも子役の時から僕たちとずっと一緒でしたからね。

錦之介の叔父は若い時に歌舞伎を離れて映画の大スターになった。歌舞伎の役々のことも熟知してました。しかし、「もう歌舞伎には戻れない。俺の身体から歌舞伎の匂いが消えてるから」って言ってました。つくづく大変な世界に身を置いてる、と思いますね。

 

伝統芸能の世界ではこの研鑽の積み重ねが「重要無形文化財」なのだろう。「保持者」に認定されて本当によかったですね。