筆者の関容子さん(左)と

大変な世界に身を置いている

ところで、近頃の長男・米吉さんの活躍はめざましく、今年の1月、池袋の芸術劇場でタイトルロールを演じた『オンディーヌ』(ジロドゥ作)の妖精的な美しさには目を瞠った。

――まぁ本人に言わせると、こんな顔で、肩も小さいし、これで立役やったらおかしいでしょ、って(笑)。それで吉右衛門のお兄さんに相談に行かせたら、「楽(らく)までに女で歩けるようになって来い」って。

すぐに藤間のご宗家(勘祖師)に歩き方からお稽古してもらって、いよいよ楽の日に歩く試験。「まだまだだけど、まぁ勉強しなさいよ」って一応許可を得たんですよ。

『オンディーヌ』のことだけど、僕も高校を卒業して、大学へ行ったつもりで劇団四季の養成所に2年ほど通ったことがあるんです。浅利慶太さんも「どうせお前は歌舞伎に帰るんだから、ここで拾えるものだけ拾ってけ」って。だからこれ要するに歌舞伎役者としてのお稽古ごとの一環ですね。義太夫、日本舞踊、鳴物の稽古と並んで、歌やバレエのレッスンを受けました。

四季では『さよならTYO!』というミュージカルで、ちょっとした役ですけど日生劇場の舞台に立って、歌ったり踊ったりしましたよ(笑)。倅の『オンディーヌ』を観に行って、その頃をなつかしく思い出しましたね。