22年1月にはイスに座って滑る「デュアルスキー」にも挑戦!(写真:『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』より)
「国民生活基礎調査」(2019年)によれば、要介護認定を受けた世帯数は増えており、構成割合として「要介護4」はそのうち7.5%となっています。要介護4は、介助なしで立ったり歩いたりするのが難しい状態を指しますが、70歳を過ぎてから三度のエベレスト登頂や、86歳でアコンカグア登頂挑戦をしてきた冒険家・三浦雄一郎さんも、少し前まで「要介護4」の状況にあったそう。息子である豪太さんが異変に気づいたきっかけとは――。

父の様子がおかしい

そのとき僕は、父の検診に付き添うためにたまたま札幌の両親の家に来ていた。

深夜3時半頃、大きなテレビの音がして目を覚ました。父の仕業だろう。

高齢者にありがちなことだろうが、父はいつも大きな音でテレビを観る。好きな相撲中継も「はっけよ~い」「残った! 残った!」と行司の声が大音量だ。また、夜中に目を覚ましてしまい、寝つけないときはテレビを観ていることもしばしばあった。

別の部屋で寝ていた僕はそのときも、「まったく迷惑だなあ」と目をこすって、頭から布団をかぶった。

だが、どうも様子がおかしい。テレビの音がいつもの大音量よりもさらに大きいのだ。いくらなんでも大きすぎる。それでもなんとか眠ろうとしていると、遠くから何やら声が聞こえる。

「お~い。お~いい」

父が呼んでいるのだ。

結果的にはテレビの音を大きくすることで、その声に僕が気がつくのが遅くなったのだが、それが父が僕を起こすためにできる精一杯のことだった。そのとき、父は身体に力が入らなくなっていたのだから。