我が家に浮上したもうひとつ深刻な問題
一方、父が入院することで、我が家にはもうひとつ深刻な問題が浮上した。
父はある意味で安心だ。病院にいる以上、24時間、何かあったらすぐに最善の措置が約束されている。
問題は自宅にひとり残される母である。父と同じ年齢の母は、普通に生活できるもののわずかに認知症の傾向もみられる。また、そのことで物事が思いどおりにならずイライラすることも多いようだ。さらに、複雑骨折をした経緯から両膝が人工関節であり、歩行に障がいもある。
そんな母が自分でクルマの運転をしたいと主張する。「私は大丈夫だ」と。札幌の生活では自動車に頼らざるを得ないという母の気持ちもわかるが、もちろん、怖くてとてもハンドルを握らせることはできない。
そこで、コロナ禍の環境に配慮しつつも、神奈川に住む僕と、東京に住む姉と兄、3人でローテーションを組んで札幌の母の面倒をみることにした。
また、病院の方にお願いして父には動画でメッセージを送るなどしていた。あの息苦しい2020年の夏のことだった。