現代の生きる糧として注目されている「推し活」。もともとは若者を中心に使われる言葉でしたが、昨今は「幸福寿命」の観点から高齢者に推奨する動きが活発になっています。そんな「シニア推し活」について、高齢者医療の第一人者・和田秀樹が解説した著書『60代から100歳以上まで 人生が楽しくなる「シニア推し活」のすすめ』より、一部を抜粋してご紹介します。
推し活がもたらす非日常の時間がストレス解消に
推し活には、日常生活でのストレスをやわらげ、気分を高揚させる力があるという一面もあります。
老年医療の現場では、親を介護する家族を多く見かけます。そういった方々が日々の介護で疲れ切っているように見えるときには、「ショートステイに親を預けて、2、3日、旅行でもしてはいかがですか?」と、提案することがあります。
もちろん親の状態は気になるでしょうが、日々、介護に追われることは、想像以上に心身に大きな負担がかかります。日常的に苦しい思いをしている人たちにとって、日常との連続性を絶ち、思い切った気分転換をすることは、精神的な健康を保つためにとても重要なことです。
しかし、日常から抜け出すことは、意外と難しいものです。例えば、「憧れの場所を訪ねての海外旅行」や「予約のとれない三ツ星レストランでのディナー」など、通常とは全く異なる環境に身を置かない限り、日常の連続性を絶つことはなかなかできません。
人によっては、お気に入りのレストランでの食事が非日常と感じられることもあるでしょうが、真に「非日常の自分になれる場所」を見つけるのは容易ではないのです。