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日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合、日曜午後8時ほか)。ドラマが展開していく中、江戸時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まっています。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「家重の遺言」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

史実にはない<家重の遺言>

32回で、松平定信の老中就任を一橋治済が進めるようとしたのをめぐり、「将軍家の身内は老中になれない。9代将軍の徳川家重はそう遺言した」というやりとりがドラマに出てきました。

はて? 今回はその辺りのことを論じていきましょう。

まず、史実としてどうか? 家重将軍がそうした遺言をした、という話は史実にはありません。

そこはドラマですから、どうのこうのと言うつもりはありませんが、問題は「家か血か」ということだと思います。