家族の関係を大切にする(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)

3年前に軽度認知障害(MCI)と診断され、Uターンに向けて努力を続ける俳優・山本學さん。2度のがんを経験し、少しずつできないことが増えていく中、「それでも【今日を生ききる】」という思いを胸に一人暮らしを続けています。そこで山本さんが認知症専門医・朝田隆医師との対談をまとめた『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』より、一部を抜粋して紹介します。

孤立と老いが孤独感に拍車をかける「老の悪循環」を避けるには

【山本】:僕は役者を仕事にしているから、定年がないんです。

でも、定年を迎えた友人や知人が増えてくると、「まだ働けるのに、年齢で仕事を打ち切られて、どうやって生きていくんだろう」って考えることがありましてね。

【朝田】:「どうやって」、というのは仕事のことですか?

【山本】:いや、仕事のない孤独感というか、虚脱感です。

生活の中心にあった仕事の場がなくなる。ともに取り組んでいた、戦っていたと言ってもいいのかな、そういう同僚や関係者との人間関係もパタリと消えてしまう。そのときに感じる孤独感を、どうやって解消しているんだろう、と考えてしまってね。

僕ら役者は、仕事のないときはジタバタせずにじーっと待っていろというのが常識で、まあ暇なんですね。

【朝田】:定年で仕事と、そこにまつわる人間関係がいきなりなくなってしまう。やるべきこと、話すべき相手もいなくなり、誰でも少なからず孤立し、孤独になりますが、普段はそれに気づかない。

ところが、ふとした瞬間に孤独感が湧いてくる。

そうなると、文字どおりの孤立が孤独感に拍車をかけてしまう。そういうときにどう対処しているか、ということですね。

【山本】:そういうことです。「自分だったら何をしているんだろう?」と。