右胸が縮んでいる
2024年5月下旬。いつもと変わらない朝のはずだった。
でも、その日は違った。
目を覚ましたら、シャワーを浴びて鏡を見る。それが私の毎朝のルーティン。タオルで濡れた体を拭いて、ふっと鏡に目を向けた、その瞬間、息を呑んだ。そこには昨日までとは明らかに違う自分の姿が映っていた。
右胸が縮んでいる――。
カップ数でいうと、Cカップから、Aカップぐらいにシューッと。それに乳首のあたりがえぐれて、なんだかデコボコもしている。
「え、私の更年期障害って、こうなんだ」
真っ先に、そんなことが頭に浮かんだ。
当時の私は51歳で、更年期らしい症状はほとんどなかった。体がほてったり、のぼせたりするホットフラッシュが出たこともなければ、唸り声を上げちゃうような頭痛を感じたこともない。「女性ホルモンの減少で、乳房が小さくなることがある」という話を聞いたことはあった。だから、自分の縮んだ胸を見て「ああ、これが私の更年期か」と妙に納得した。
けど、それだけで片付けてしまうことに、わずかな違和感もあった。
仕事をしても、ママ(クラウディア)とランチに出掛けても、ネットフリックスで映画を観ても、「ほんとに更年期障害なのかな」「ちゃんと診てもらったほうがいいかな」。ふっとした瞬間に不安がよぎる。そんな気持ちは日増しに大きくなって、段々、自分だけでは抱えきれなくなった。
気づけば娘の百々果にLINEを送っていた。
「ねえ、私のおっぱい、なんか違うんだよね。右と左が」
百々果はアメリカのカリフォルニアで暮らしていた。向こうは仕事中だったはず。
だけど、すぐに返事がかえってきた。
「えっ、どれくらい?」
「一個はシリコン入ってる感じ」
「えっ」
自分の胸の写真を送った。
「ママ、それマズいよ。病院へ行ったほうがいい」
百々果の言葉は短かったけど、重かった。明らかに動揺している。でも、私にさとられないよう冷静なふりをしているのもわかる。だからこそ響いた。
百々果の反応を見て、更年期障害で片付けることはやめた。