92歳になった今も創作活動を続ける人形作家の粟辻早重さん(撮影:村山玄子)
人形作家の粟辻早重さんは、92歳になった今も創作活動を続けながら、ひとり暮らしをしています。歳を重ねながら充実した日々を送る、それまでの道のりとは――(構成:篠藤ゆり 撮影:村山玄子)

前編よりつづく

子どものために作った人形がきっかけ

臨月間近に帰国して長女を出産。数年後には長女に続いて、次女が生まれました。私が人形作家になったのは、娘のための抱き人形を作ったことがきっかけ。おそらく、海外で見た可愛い人形に影響を受けたのだと思います。

完成したものを家の棚に飾っていたところ、近所に住んでいたインテリアデザイナーの剣持勇(けんもちいさむ)さんがあるとき、「個展を開いたら」と勧めてくれたんです。それで、初めての個展を70年代に行いました。

モチーフを太った女性にしたのは、生命力を感じられるから。タバコや風船を持った人形も作ったのは、女性がまだ自立していなかった時代なので、「自分で生き方を選ぶ女性」を表現したかったんです。

「とびこむ女」は、娘が通うプールでママさんクラスに参加している女性たちを見て、水着姿が面白いなぁと思って着想を得ました。当時の大人の女性は、今みたいに痩せてなかったんですよ。

だんだんと作品が注目されるようになり、個展を開いたり広告に使われたり。85年の大銀座祭りでは、資生堂提供で「バスタブの女」という体長15メートルの巨大な人形を作りました。時代背景を考えると、挑戦的な作品だったと思います。

 

高島屋の広告で使用された大きな人形とともに(写真提供:粟辻さん)