「これから年金で暮らしていける?」「もし認知症になったら…」など、老後の生活を考えるとさまざまな不安がよぎるという方も多いのではないでしょうか。しかし「見えない未来を心配しすぎず、見えている今日を楽しく気楽に過ごすほうがいい。もっと気楽にいきましょう」と提案するのは、精神科医・保坂隆先生です。そこで今回は、保坂先生の著書『老後は「いいかげん」がちょうどいい』より一部を抜粋し、老後の人生を「いいかげん」に過ごすヒントをご紹介します。
引き算の美学で暮らす
「引き算の美学」という言葉を、耳にしたことがありますか。今あるものに何かを足すのではなく、今あるものから何かを引いていく。その結果、本当に好きなもの、本当にしたいことだけが見えてくる。そんな生き方を表した言葉です。
もともと日本人は、余計なものをそぎ落とし、ごくわずかなもの、場合によっては一点に集約したものを愛でる文化を大切にしてきました。
「あれが欲しい」「これが欲しい」と欲望をかぎりなく膨らませる生き方になったのは、高度経済成長期やバブル経済期を経験してきたからかもしれません。
今、家に物があふれている人は、古都の名刹を訪ねてみませんか。そこには、必要なもの以外は何も置かないという「引き算の美学」を貫いた場所もあります。
京都の龍安寺は、白砂と石だけで宇宙を表現していることで有名です。ほかにも、大徳寺の塔頭のひとつである大仙院には緑の枯山水と呼ばれる庭があり、とくに西側の庭園は白砂敷の上に数個の石と一本の樹だけで構成され、簡素の極みともいうべき造りになっています。
こうした「引き算の美学」で造られた庭などを鑑賞するうちに、いらないものをすべてそぎ取った、日本古来の究極の美を感じられるようになるのではないでしょうか。