(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が2025年に実施した「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の者のいる世帯のうち、一人暮らし(単独世帯)の割合は全体の33.8%で最も多い形となっているそうです。そんな中、東北大学名誉教授であり脳神経科学を専門とされている虫明元先生は「今、日本のみならず世界中で『孤独』が大きな問題になっている」と警鐘を鳴らします。そこで今回は虫明先生の著書『孤独脳 脳のSOSに気づき心と体を壊さない30の方法』より一部を抜粋し、「孤独感に振り回されず、健康で自分らしく生きるヒント」をお届けします。

中年期(40代後半〜50代)

「更年期」の孤独

更年期は、ホルモンの急激な変化が心身にさまざまな不調をもたらすだけでなく、実は孤独感とも深く関わっている時期です。まずは、体に何が起きているのかを見ていきましょう。

更年期は、女性はエストロゲン、男性はテストステロンという性ホルモンの減少に伴って、40代から50代にかけて心身に大きな変化が訪れる時期です。これらのホルモンはもともと男女ともに20〜30代をピークにその後は徐々に減少していくのですが、女性の場合は卵巣機能の低下によってエストロゲンが急激に減少します。

エストロゲンの減少は、精神の安定に関わる「セロトニン」や、意欲や他者への関心にも関わる「ドーパミン」の減少を招き、さらに、自律神経のバランスを崩します。これらにより「更年期障害」と呼ばれるさまざまな不調症状があらわれます。

症状は大きく分けて、ほてりやのぼせ、発汗といった血管まわりの症状、わけもなくイライラする、不眠、倦怠感といった精神面の症状、動悸、めまい、頭痛といった体の症状の3タイプがあり、数百種類にものぼるとされています。その出方や程度は人によってさまざまです。

一方、最近では男性にも更年期があることが知られるようになりました。テストステロンの減少は女性の場合と同じく、セロトニンやドーパミンの減少、自律神経の乱れを招きます。テストステロンの減少スピードが緩やかであればそれほど症状が出ない場合もありますが、睡眠不足やストレスによって減少スピードが急激になると、女性の更年期障害と同様の症状があらわれやすくなります。

男女ともに症状の程度には個人差があり、まったく症状があらわれないという人もいる一方で、日常生活に支障が出て女性なら婦人科、男性なら泌尿器科、男女ともに精神面の症状が強い場合は心療内科で治療が必要なケースもあります。強いストレスや睡眠不足によって症状が強くなる傾向にあり、その症状の強さがストレスとなるため、ここでも「負の無限ループ」に陥るリスクがあります。

また、女性の場合は、閉経を迎えるとその後5年以内には更年期障害もおさまります。一方、男性の場合は、更年期の始まりも終わりも曖昧で(おおむね40歳以降でいつでも起こりうる)、テストステロンの減少自体は60代以降も緩やかに続くため、症状が長く続くケースもあります。

こうした更年期のホルモン変化は、孤立・孤独とも密接に関わっています。まず、セロトニンやドーパミンの減少による情緒不安定や無気力から、他者や社会的つながりへの関心や意欲が低下します。また、身体的な不調から外出や人と会うのが億劫になることも、孤立・孤独の原因になります。

さらに、女性の場合は閉経という局面で、また男性の場合はテストステロンの減少による性欲や性機能の衰えに直面し、それぞれ女性としてのアイデンティティ、男性としてのアイデンティティを喪失してしまうように感じて、寂しさ、孤独感をおぼえる人も少なくありません。

更年期にあたる年代のこうした孤独は、職場での立場や家族・家庭環境の問題や変化が加わることによって、さらに深化また複雑化していきます。