(イラスト:八木美穂子)
深夜の枕元で、暑い夏の昼下がりに、忘れていた命日に――。アレは何を知らせようとしていたのか

髪の毛の中に誰かの手が入ってきて

社宅住まいだった我が家が、思い切って戸建ての購入を決めた時のことです。

毎週末不動産会社を回っては、物件の内見を続けていました。当時、2人目の子が1歳になったばかり。物件探しに疲れ果てた頃、夫が会社の人の勧めで見つけてきたのが、坂の上にある家でした。

完成して半年、4DKの2階建て。日当たりがよく、庭もある。小学校からも徒歩2、3分だとか。ここでいいじゃない? わざわざ2人の子どもを連れて見にいくのも億劫で、間取り図と夫が撮ってきた写真だけで、最終確認を終わらせました。

手続きが済んで、引き渡しの日も決定。引っ越し前にカーテンと照明を取り付けに行こうと、寝袋を持って泊まりがけで新居に出かけました。キャンプみたい、と長女も大喜び。

「今日は好きな部屋で寝ようぜ!」と夫が提案し、長女は勉強部屋、次女と私が子ども部屋、夫が主寝室で過ごすことにしたのです。