何のために元気でいたいのか

瀬川 昔は料理が大好きで、凝ったものも作っていたんですけど、更年期を過ぎた頃から、その気力がどんどんなくなっていって。やはり自分で作ったほうがいいんですよね?

川口 皆さん、年齢を重ねると、作る体力がなくなってきたと言います。そこも工夫のしどころですよ。今は、高齢者向けの宅食サービスも充実しているので、それを頼るのも一案です。

瀬川 缶詰やレトルト食品も進化していますよね。常温で保存できるし、価格が安いので、お財布にも優しいですし。

川口 特に魚の缶詰は高齢者にもってこい。真空加熱で骨までやわらかいので、不足しがちなカルシウムを手軽に摂取することができます。

瀬川 先生のお話を伺ってホッとしました。上手に他人の力を借りていけばいいのですね。70代の不調の時、舌がピリピリ痛む舌痛症に悩まされていたのですが、医師にビタミン剤を処方され、舌の運動をしたら改善しました。

川口 足りない栄養はサプリメントなどで摂取するという選択肢もあります。ただし、サプリメントはあくまでも栄養補助食品。サプリを飲んでいるから野菜を食べなくてもいいといった発想は本末転倒ですよ。

瀬川 今回のように気軽に栄養の悩みについて相談できる場所があればいいのですけど。

川口 おっしゃる通りです。現在、私はドラッグストアに勤める栄養士の育成に力を注いでいます。そうすればちょっとしたことも相談できるようになる。ドラッグストアはもっとも身近な医療施設として、有効活用すべきです。

瀬川 素晴らしい活動ですね。

川口 あとは、全国の「暮らしの保健室」を訪ねていただいても!新宿で催している「からだに優しい食事」には、普段外出しない方も参加しています。「美味しいね」と言いながら、みんなで食べることが楽しいとおっしゃる。私はよく「食べる口」と「しゃべる口」が健康寿命を延ばすと言っています。人は口から再生するのです。

瀬川 食べ方を変えることで、人生を好転させることは何歳からでも可能でしょうか?

川口 可能です!何のために元気でいたいのかを明確にすると、食べる意欲も湧いてきます。

瀬川 私は末永く歌い続けていきたい。そのためには筋力も必要、スタミナも必要です。ならばどんな栄養素を摂っていけばいいのかと考えて、自分なりの食事スタイルを構築すればいいのですね。今日はありがとうございました。

川口 今回の話がヒントになったら嬉しいです。