自己一致の状態

ではなぜこのことが、運に結びつくのでしょうか。

実は、「しあわせのものさし」にも人を呼び寄せる力があるのです。

人間の脳の中には、「快感」を生む報酬系という回路があります。これは、脳の中で比較的奥のほうにある回路で、外側視床下部、視床、内側前脳束、腹側中脳、尾状核といった、快感を生み出すのにかかわる部分の総称です。この部分が刺激されると人は快感を覚えます。食欲や性欲など本能的な欲求だけでなく、人助けなど社会的な行動も含め「自分が気持ちよい行動」をとると活動する部分です。

自分が心地よい、気持ちよいと思える状態を積極的につくり出している人は、常にこの報酬系を刺激していることになります。自分の報酬系を上手に操れる人は、自分のいまある状態にとても満足できる人である、ということもいえるでしょう。

中野先生「大切なのは他人の尺度でなく、自分の尺度で行動すること」(写真提供:サンマーク出版)

人がもっともしあわせを感じるのは、自分が心地よいと思える状態に心底ひたっているとき、といえます。「もっとああしたい」「もっとこうなったらいいのに」という欲を忘れ、「ああ、気分がいいな」「気持ちがいいな」としか感じない瞬間です。その瞬間には、「ああ、もう何もいらないな」とさえ思えます。

つまり、常に快の状態をつくり出す努力をしている人(報酬系を刺激している人)というのは、心理学でいう自己一致の状態になるのです。