年が明けてスタートした『光る君へ』。大石静さんが大河ドラマの脚本を手がけるのは、『功名が辻』以来、18年ぶりとなる。わかっていることの少ない紫式部と平安時代をテーマに、大石さんの描く1000年前の物語が幕を開けた(構成=山田真理 撮影=大河内 禎)
平安時代を知るのは面白い
仕事がなかったら、とてもやりきれなかったでしょうね。でも仕事の場には仲間がいる。現場に行って美術さんから「大石さん、新しいセット見てよ!」なんて声がかかると元気が出る。
心身の疲れを癒やす時間もおかずに仕事に戻りましたが、「この仕事を受けていてよかった」と思いました。そうして少しずつ立ち直っていった気がします。
ドラマ作りというのは、私の作る土台の上に、スタッフやキャストがみんなで家を建てていくような作業。こと大河ドラマとなると、総勢100名以上の人が関わって、どこでロケをするか、どんな衣装を作るか、どんな芝居をするか、どんな映像にするかを考えるわけです。
当然、書いているときのイメージそのままに映像が仕上がることなどなく、そのギャップを「ほほう、こうきたか」と面白がったり驚いたり、ときにがっかりしたり(笑)。そんな心の揺れを味わえるのも、脚本家という仕事の刺激的なところです。
猛暑のなか、極寒のなかでのロケは、スタッフ・キャストみなが本当に大変。そんなとき、「この面白い台本なら、つらくても頑張ろう」と思ってもらえたらチームの結束は強まりますし、「こんな本のために苦労すんのかよ」と思われれば雰囲気は悪くなり、結束は乱れます。その責任は大きいと思って、面白い本を書かねばと、いつも自分を鼓舞します。