ゼラニウムやナスタチウムなど、西日に映える黄色やオレンジ色の花が咲く「スパニッシュ・ガーデン」

「当時、100軒ぐらいは見てまわったかな。僕は早く決めたかったけど、ベニシアは妥協しなかった。彼女は40代になっていたし、一生の住まいを見つけたいと考えていたんでしょうね。今思えば、ベニシアがこだわってくれて本当によかった。ここでいろんな仕事をし、思い出が作れましたから」。

頭金ゼロ、全額住宅ローンで手に入れた築100年を超える古民家は、傷みが気になった。

「お金がなかったから、ほとんど自分たちで改装しました。屋根や床もボロボロだったし、庭もね、雨が降ると水浸しになるから排水用パイプを何本も埋めて。いやあ、全部が面白かったですね」。

梶山さんが庭の基礎土木工事を終えると、ベニシアさんは待ってましたとばかりに「これから私は、ハーブとガーデニングを趣味にします」と宣言し、庭造りを開始。家をぐるりと囲む約40坪の庭をテーマごとに7つの区画に分け、1年ごとに1つずつ完成させていった。

「狭いんだから、細かく分けなくていいのにね(笑)。でも、ああやって楽しんでいたんだろうな。今、僕がするのは草取り程度。雑草だと思って抜こうとすると、ベニシアが植えたハーブだったりするの」。

縁側の先に広がる庭はかつての趣を残しつつも、そこかしこに主のいない寂しさを漂わせている。