大村崑
(撮影:本社・武田裕介)
厚生労働省が公表している「令和5年簡易生命表の概況」によると、2023年の日本人の平均寿命は男性が81.09年、女性が87.14年となっています。80歳以上の高齢者が増えるなか、「90代は楽しいですよ。ぼくは今、最高に幸せです」と話すのは、93歳の喜劇役者・大村崑さんです。今回は大村さんの著書『93歳、崑ちゃんのハツラツ幸齢期』から一部を抜粋し、「高齢期」を「幸齢期」に変えるヒントを紹介します。

長生きしてよかった

ありがたいことに、街を歩いていると多くの方が声をかけてくださいます。先日も通りがかった紳士に話しかけられました。

「大村崑さんですよね」

「そうですよ!」と元気に答えると、

「お会いできてうれしいです。あの……大変失礼ですが、おいくつになられました?」

「93歳です」

「93歳。そうですか」

それで納得されたかと思いきや、次の瞬間、

「えーーーーっ!? きゅうじゅうさんさい!?」

と紳士らしからぬオーバーアクションで二度見されるじゃありませんか。目を丸くしてぼくをじっと見つめ、

「いやいや、冗談はやめてください。嘘でしょう!」

「ほんまですよ」

「ええっ!? お若いですねえ! 驚きました。とても、そんなお年には見えません。すばらしいなあ」

まだ信じられないという顔でぼくの手を強く握り、名残惜しそうに去って行かれました。

実は最近、こんなことがよく起こるんです。

そのたびに、ぼくは心の中でひそかにガッツポーズ。長年、喜劇役者をやってますから、お客さんの反応が大きいとうれしくなるんですよね。いやあ、長生きしてよかった。年齢を言うだけでこんなに褒めてもらえるなんて、えらい得した気分です。