『いい人生だった』と答えた次に出る言葉

多くの人間は、「がんばれがんばれ、そんなんじゃダメだ」と言われ続けて死んでいきます。僕はそうではなく、「ほめてあげよう」と家族に言います。

「『母ちゃんありがとう、あの時は楽しかった』と言ってあげよう。そしたら、ほとんどの人は『いい人生だった』と答える。

そして、『いい人生だった』の次に、『もう少し生きたい』と欲も出るから」と。

お孫さんがいる方だったら、こんな話もします。

「孫に、ちゃんと死んでいく姿を見せなきゃいけないんだよ。ぼーっと死ぬのを待ってるんじゃなく、がんばって『ばあちゃんは大丈夫よ』とかっこつけなきゃいけないね。そういうおばあちゃんの姿を見た孫は、後の人生が違ってくる。

入院して、死んで骨になって帰ってくるんじゃなく、死ぬまで歯を食いしばっている姿を見せると、絶対孫は違ってくるよ。それがばあちゃんの最後の大事な大事な仕事なんだよ」

そうすると、おばあちゃんは「がんばる」と言ってくれます。

気持ちが上がって、「もっと生きたい」「がんばる」。患者さんからポジティブな言葉が出たら、僕の出番です。

「もう少し生きたい? よし、歩こうよ!」

「歩いて棺桶に入ろうぜ」

 

※本稿は『棺桶まで歩こう』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

 

 

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棺桶まで歩こう』(著:萬田緑平/幻冬舎)

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