『いい人生だった』と答えた次に出る言葉
多くの人間は、「がんばれがんばれ、そんなんじゃダメだ」と言われ続けて死んでいきます。僕はそうではなく、「ほめてあげよう」と家族に言います。
「『母ちゃんありがとう、あの時は楽しかった』と言ってあげよう。そしたら、ほとんどの人は『いい人生だった』と答える。
そして、『いい人生だった』の次に、『もう少し生きたい』と欲も出るから」と。
お孫さんがいる方だったら、こんな話もします。
「孫に、ちゃんと死んでいく姿を見せなきゃいけないんだよ。ぼーっと死ぬのを待ってるんじゃなく、がんばって『ばあちゃんは大丈夫よ』とかっこつけなきゃいけないね。そういうおばあちゃんの姿を見た孫は、後の人生が違ってくる。
入院して、死んで骨になって帰ってくるんじゃなく、死ぬまで歯を食いしばっている姿を見せると、絶対孫は違ってくるよ。それがばあちゃんの最後の大事な大事な仕事なんだよ」
そうすると、おばあちゃんは「がんばる」と言ってくれます。
気持ちが上がって、「もっと生きたい」「がんばる」。患者さんからポジティブな言葉が出たら、僕の出番です。
「もう少し生きたい? よし、歩こうよ!」
「歩いて棺桶に入ろうぜ」
※本稿は『棺桶まで歩こう』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
『棺桶まで歩こう』(著:萬田緑平/幻冬舎)
「歩けるうちは死にません」「抗がん剤をやめた方が長く生きる」「病院で体力の限界まで生かされるから苦しい」「認知症は長生きしたい人にとって勝ち組の証」「ひとり暮らしは、むしろ楽に死ねる」など「延命より満足を、治療より尊厳を」という選択を提唱。
医療との向き合い方を変えることで、家で人生を終えるという幸せが味わえるようになる!
2000人の幸せな最期を支えた「在宅」緩和ケア医が提言する、病院に頼りすぎない【生ききる力】とは?




