「残された時間、一馬の好きなことをさせてあげたい」

一馬は大喜びして、体調までよくなったそうです。この出来事をきっかけに、両親は「残された時間、一馬の好きなことをさせてあげたい」と決心したようです。

2019年10月、両親が萬田診療所へやって来ました。

僕は迷いの残る両親に、「本人に愛と感謝をこれでもかと伝えて、一馬の好きなことを全部叶えてあげましょう」と提案しました。

両親が病院に戻って一馬の意思を聞くと、「退院する!もう病院には来ない」と言いました。

そして一馬は、群馬県渋川市の自宅に帰りました。

僕は、一馬が自宅に戻る日、ピエロの恰好で出迎えました。残念ながら、あまりウケませんでしたが……。

家に戻って10日目のことです。一馬は遊びに来ていたいとこたちを、急に一人ずつ呼び始めました。

 

棺桶まで歩こう』(著:萬田緑平/幻冬舎)