心にいいことをしたほうが長く生きてくれる
僕の治療方針は、「身体の元気より心の元気」です。病院では、治療と安全管理の面から、患者はたくさんの制約と不条理を強いられます。
起床時間と消灯時間が決まっている、食欲に関係なく食事が出てくる、毎日食べた量と便と尿の量を聞かれ、勝手にトイレに行けば怒られる。若い看護師から、ジジババ扱いされるのも腹立たしい……。
僕の患者さんたちは、自宅で暮らし、いつ寝ようと、食べても食べなくてもかまいません。
毎晩お酒を飲みたい、タバコを吸いたい、食べたいものを食べたい、おむつはいや……。こんな患者の願いは、病院にいたら「ワガママ」の一言でおわり。とんでもない身勝手でしょう。
けれど、わが家にいるのですから、好きに過ごしていいのです。僕は「身体にいいこと」より「心にいいこと」を大事にしています。
たくさんの患者さんを診ていると、結局は「心にいいこと」をしたほうが長く生きられるように思います。
※本稿は『棺桶まで歩こう』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
『棺桶まで歩こう』(著:萬田緑平/幻冬舎)
「歩けるうちは死にません」「抗がん剤をやめた方が長く生きる」「病院で体力の限界まで生かされるから苦しい」「認知症は長生きしたい人にとって勝ち組の証」「ひとり暮らしは、むしろ楽に死ねる」など「延命より満足を、治療より尊厳を」という選択を提唱。
医療との向き合い方を変えることで、家で人生を終えるという幸せが味わえるようになる!
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