オンラインでの取材を終えて、ふと…

所々に破れ目があるものの、しみや汚れは少ない。破れた箇所は、丁寧に補修されているようだった。それが、彼女の古い宝物であることが分かる様子だった。

「アメリカに来る時も、大切に持ってきたんだものねえ。思えば、よくちゃんと、残っていたものだわ」

そう言うと、ぼんこさんは感慨深げに手元の本を眺めた。

その眼差しは、私に、10代の頃の彼女を想像させた。

笑いあり友情ありのアニメーション活劇は、戦後を生き抜く少女の心にどれほど素敵な彩りをもたらしたことだろう。80年もの歳月を経たとは思えない、よく手入れを施された小さな本が、少女の喜びの大きさを語っていた。

「私の息子に、言いつけていることがあるの」と、ぼんこさんは「こっそり」といった雰囲気で教えてくれた。

「これは私の大事なご本だから、私が死んだらお棺に入れてね!って」

93歳の彼女の言葉に、私ははっとしたのだが、当の御本人が「あっはっはー」と大笑いし始めたので、しんみりする時間は少しもなかった。

ぼんこさんへのオンライン取材を終えて、ふと、ミッキーの古いモノクロのアニメーション映像を探してみた。見始めると、これがとても面白い。少しだけ視聴するつもりが、躍動的でコミカルなお話にすっかり見入ってしまった。
軽やかな足取りで映画館へ急いだぼんこさん一家の後ろ姿が、白黒映画の片隅に映っているような気がした。

【関連記事】
早花まこ「戦争の記憶を語ってください―宝塚歌劇団という場所を通じ、上級生から戦争を学んでみたい」
元宝塚・男役がプロデュースする「麗人プロジェクト」。練習の成果を「人生のワルツ(縁舞曲)」として披露!
天真みちる 宝塚を卒業した男役が13年ぶりにスカートに挑戦した結末とは。鳳真由さんの接客術に乗せられ、壮一帆さんからジャイアンのように笑われる