老いてからも慕われる人
私はたくさんの患者さんを見ながら、どういう人のところに見舞い客が来て、どういう人のところに見舞い客が来ないのか、幾度となく考えました。
やはり、人に対し分け隔てをせず気さくに接してきた人は、老いてからも慕われるようです。
反対に、地位にしがみつき、上司にばかり媚びて部下を粗末に扱ってきたような人は、誰からも訪ねてもらえません。
考えてみると、社会的地位の高い人の多くは、若いころから「目上の人に気に入られること」が何よりも大切だったのだと思います。実際、そうして上の人に気に入られて出世してきた方も多いでしょう。
けれども歳を重ねると、その「上の人たち」はすでに亡くなっていたり、外出もままならない状態になっていたりします。つまり、見舞いに来てくれるとしたら、自然と年下や自分より地位の低かった人たちになるのです。
もちろん目上の人に気に入られて出世することが悪いわけではありません。でも、そのときに、自分より立場の下だった人も大切にしてこなければ、晩年になって誰も訪ねてくれません。
若いころから自分の出世のために上司にばかり取り入って同期や部下を蹴落としてきた人は、高齢になって、認知機能が衰えたり、寝たきりになって入院したりするようになると、誰からも見舞われないという状況に陥りがちです。自分を引き上げてくれた人たちはすでにこの世におらず、かつて粗末に扱ってきた年下の人たちには慕われていない──そうなれば、晩年が孤独なものになってしまうのも当然です。
そう考えると、上司に媚びて出世する人よりも年下や周囲の人に好かれる人のほうが、最終的には幸せな晩年を迎えられるのではないでしょうか。
たいして出世はできなかったとしても、人を大切にしてきた人は歳をとっても自然と慕われるものです。
