腹六分を保つ秘訣

わが家では、近所で一人暮らしをしている息子が時折夕食を食べに来ます。私が「お疲れ様です。今日はタイカレーにしましょう。仕事が終わったら家に来てください」とメールを送れば、息子は「用事を済ませてからでよろしいでしょうか」と返してきます。「いい?」「行きまーす」といった軽い言葉遣いはしませんし、私自身も命令口調では書きません。

普段の会話も同じで、「お父さん、これしていい?」ではなく、「これをしてもよろしいですか?」と息子は自然に尋ねてきます。年長者としてマナーを伝えるときも、「こういうときはお土産を持っていくのですよ」と教えれば、「勉強になります。ありがとうございます」と返ってきます。

もちろん、息子が意見を返すこともありますが、感情的にではなく、「こういう理由で今回は難しいのですが、いかがでしょうか」というように理性的に伝えてきます。私も「あなたがそれで良いと思うならいいですが、よく考えてみなさい」と返します。一見すると「冷たい」と感じるかもしれませんが、これは冷たさではなく“礼節”。その礼節ある言霊こそが腹六分を保つ秘訣であり、感情的な衝突を避ける力にもなります。

「家族でそんな話し方は水くさい」「寂しい」と思う人もいるでしょう。しかし、家族だからといって感情をすべてさらけ出すことが正解ではありません。むしろ、ほどよい距離感と礼節のある言霊を保つことで、家庭内に余計な波風が立たず、穏やかで心地よい空気が育ちます。腹六分の関係は、家庭を冷たくするためではなく、お互いが尊重し合い、健やかに暮らすための知恵なのです。

※本稿は、『家運隆昌-幸運を招き入れる暮らし方』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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