入居した施設を3ヵ月で退去した理由

今現在、私と母とはとてもいい関係。介護される側である母は遠慮なく私に要望を伝えますし、介護する側である私は、相手のニーズを無理なく引き出せているという実感があります。

そのうえで、お互いが譲れないポイントがあれば、妥協点を探っていく。このように《対話》と《妥協》を繰り返すのが、私たちのやり方です。

もちろん、最初からうまくいったわけではありません。私が「よかれと思って」決めたことが母には気に入らず、口論になる……という時もありました。

思えば当時の私は、「喜ばせようとしているのに、気持ちを踏みにじられた」と感じていたんですね。「早く自立したい」と考えていた私には、幼いころから母への反発心がありましたし、成人してからは、本音でぶつかりあうことを避けていた。そもそもコミュニケーションが足りていなかったんです。

ですからそれが口論というかたちであっても、言葉に出して互いの気持ちを確かめあう時間が必要でした。

衝突を繰り返すうちに私たちは「一緒に決める」ことがうまくなり、また一度決めたことも、状況に応じて覆せるようになってきました。

たとえば母の住まい。発症当初の母は、同じく和歌山に住む私の姉の手を借りながら、ひとり暮らしをしていました。ですが、次第に手の震えが激しくなり、料理ができなくなって。

母と姉と私の3人で何度も話しあい、母が安心して暮らすには施設に入るのがベストだという結論になりました。そして、いくつもの施設を見学し、東京にあるパーキンソン病専門の介護施設に入居を決めたのです。