ところが、母はわずか3ヵ月で退居しました。施設に落ち度があったわけではありません。むしろ介助が行き届きすぎていたのです。パーキンソン病患者には転倒のリスクがあるため、この施設ではひとりで外出することが禁止されていました。

三食用意してくれて、薬やおやつも部屋まで届けてくれる。移動がままならない患者さんには、とてもありがたい環境です。しかし、母自身は自由がないことに窮屈さを感じ、「筋力、体力が低下して、寝たきりになるのでは」と、かえって不安を抱えてしまったのです。

確かに、運動能力を維持するためにも、動けるうちは自分でできることをしたほうがいい。それは、介護される側の尊厳を守ることでもあります。

私たちは再び話しあい、母は食事サービス付きのマンションに引っ越すことになりました。ただし、介護施設ではないため、母の調子が悪くなった時には私たちの手が必要になります。

そこで、ケアマネジャーやヘルパーの力を借りながら、私と、東京で暮らす甥っ子によるサポート態勢を整えていきました。その後も状況に応じて住まいを変え、現在、母は私の家の近くにある24時間看護対応の老人ホームに入居しています。

「コスパ」で考えると、とても悪いけれど、「これが唯一の正解でなくてもかまわない」「その時々にあわせて対応する」。この心構えが、介護する側のニーズを押しつけず、される側の気持ちを尊重することにつながるのではないかと思います。

 

後編につづく

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