食べている間だけは忘れられた

ふと台所を見ると、菓子パンが目に入りました。いつもなら、糖質制限をしていたので、決して口にすることはなかったのですが、この日に限っては、すごくおいしそうに見えました。恐る恐る袋を開け、菓子パンを一口食べると、口のなかが甘さでいっぱいになりました。あっという間に菓子パンを食べ終えると、「もっと! もっと食べたい!」と今まで抑えていた食欲が爆発し、家にあったお菓子も猛烈な勢いで食べ始めました。

食べている間だけは、父親から言われた言葉もショックな気持ちも忘れられたのです。「こんなに食べちゃった」と罪悪感に襲われたBさんは「明日からはやめよう」と思いました。しかし、それからというもの、何かにとりつかれたかのように食べ続けることがやめられなくなっていきました。

<『わが子が摂食障害になったら読む本』より イラスト:しゅんぶん>

過食をするのも体力を使うため、食べ終わった後は、しばらく動くことができません。菓子パンやお菓子のゴミや食べかすが部屋に散乱したまま、Bさんがぼーっとしているのを、たまたま部屋にやってきた母親に目撃されてしまいます。母親はBさんの姿に顔をしかめて言いました。

「なに、そんなに食べ散らかして! みっともない」

母親は「部屋が汚れている」という意味で言ったつもりです。しかし、Bさんの心にはこんな風に届いたのです。

――あなたはみっともない――

ほどなく、Bさんが食べる菓子パンの量は3個から5個となり、5個となったときから食べ吐きも始まったのでした。