いしいしんじさんの回答

大切な手紙を読ませていただいた。こころにほんとうの力をもったひとのことばは、たとえ又聞きでも胸に迫る。ましてや、愛する孫娘を通してなのだから、なおさらだ。

連絡をとらないこと。顔をみせないこと。祖父はまったく気にしていない。あなたを信じているからだ。その、信じるこころのままに、いつか届くはず、と文字どおり命がけで、あなたに手紙をしたためた。

手紙とは、文字のならんだ紙でも、文章の羅列でもない。誰かのために発する、こころの「声」だ。

便せんをひらいたとき、響かないかもしれない。そのことも、祖父は知っている。そして、やはり信じている。こころからの声は、届くべきときに、必ず、そのひとの耳に届くと。

十数年をかけ、祖父の声は、あなたのところへやってきた。祖父の信じたとおり、届くべきとき、聞こえるべきときに。だからいまあなたの胸はふるえ、あなたの耳は、祖父が一生懸命書いたこと、こころをこめてつづったことまで、手紙のすべてを聞きとることができている。

相談文は、祖父への返信だ。あなたのこころの「声」なのだ。おう、届いたか、と祖父もいま、きっと笑顔でうなずいている。

※本稿は、『人生不案内』(新潮社)の一部を再編集したものです。

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