(写真:Adobe photo stock)

「最近、着られる服がない」「若い頃の服が似合わなくなった」……。年齢とともに体型や肌のトーンが変わり、おしゃれの悩みを抱える大人世代は少なくありません。「それは残念なことではなく、着物の世界からの招待状です」と語るのは、山陰地方で呉服店「和想館」を営む和と着物の専門家・池田訓之さんです。体型の変化や和の色、美しい所作など、年齢を重ねたからこそ着物がしっくり馴染む理由があるといいます。池田さんに、人生の後半戦を彩る着物生活の魅力やについて解説いただきました。

「洋服が似合わない」は着物が似合う体型になった証

私は着物店を営んでいますが、お客様の多くは、子育てを終えられた50代以上の「大人世代」の方々です。そんなお客様から、よくこの言葉をお聞きします。

「最近、着られる洋服がなくて困ってるの…」

「若い頃は似合っていた洋服がなぜかしっくりこない」

「流行の服を着ても何かが違う」「鏡の前でため息をついてしまう」

こんなお話をされたとき、私はいつもこう切り返しています。

「それは残念なことではありません。着物の世界から、招待状が届いているということですよ」と。

そう。着物は、積み重ねた年齢を生かしてくれる衣なのです。大人世代になったら、ぜひ着物生活を始めてみてはいかがでしょうか。

洋服は、身体のラインに合わせて生地を裁断していく曲線裁ちです。細さや脚の長さ、バスト、ウエスト、ヒップのラインなど、体の形の曲線を強調することで美しさを表現します。

ところが年齢を重ねると、体型は少しずつ曲線から直線へ…。ウエストまわりも、肩や腰のラインもくびれが緩やかになっていき、曲線が直線に近づいていく。

着物は、身体の曲線に合わせるのではなく、袖、身頃、と四角形に生地を裁断していく直線裁ちです。四角い生地を体に巻きつけて着るため、身体のラインが直線に近づくほどシワになりにくくてしっくりくるのです。