夕方まで34時間連続勤務ということも
3:40、昨日からの勤務は20時間になり、疲れで関節が軋む。少しでも睡眠時間を確保しようとベッドに潜り込む。が、完全に眠気が吹っ飛んだ。患者の話を聞いているうちに脳は覚醒した。それでも30分ほどしてようやくうとうとすると……電話の音。看護師からだ。
「転倒の報告です。90歳の患者さんがトイレから戻ったときに転んだみたいです。後頭部に傷ができて出血しています。ふだんから血をサラサラにする薬も飲んでいる人なんで、診てくれませんか?」
「勘弁してよ」と内心愚痴りつつ、いつも世話になっている看護師さんなのでできるだけ愛想よく「わかりました。すぐ行きますね」とベッドから這い出る。
「ねみぃ~」とこの事態を茶化しながら病棟に行き診察。診てみると思いのほか深い挫創で(8)、洗浄後ステープラーというホッチキスのような器具で縫合。
5:30、ベッドに戻るが、2回の覚醒後ではもう寝付けない。
6:00、「もう眠れん!」と布団を蹴って起き上がる。洗面を済ませ、昨日入院した患者の経過などをカルテで確認。
8:00、朝食も検食が用意されているが、夕食からは大幅グレードダウン。パン1個とヨーグルト。まあ、無いよりマシと胃に流し入れる。これで昨日の勤務スタートから24時間が経過。本来であれば、当直担当は午前中でタイムアップ(9)。キリのいいところで引き上げてもいいのだが、
「先生、**さんがてんかん発作を起こして止まりません。すぐ来てください」
とさっそく入院病棟から呼び出しがあり、駆けつける。入院病棟ではなんだかんだと午前中からトラブルが起こるのでその対応に昼すぎまで駆け回ることも茶飯事だ。そのまま夕方まで34時間連続勤務ということも……。
最近、当直が増えると動悸が増える。私の寿命というバッテリーは、当直のたびに少しずつ放電されているような気がする。
(8) 当直中、高齢者の転倒は珍しくない。明らかなケガがなければ、翌日まで経過観察する。しかし、出血していれば診察しないわけにはいかない。
(9) 当直明け、とくに平日の昼すぎに帰れると解放感でちょっとした軽躁状態になる。また、当直による寝不足のおかげでその晩はぐっすりと深い眠りに入れる。当直の数少ない利点だ。
※本稿は、『精神科医おどおど日記――閉鎖病棟24時、本日当直、あらゆる精神疾患寝ずに診ます』(発行:三五館シンシャ、発売:フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
『精神科医おどおど日記——閉鎖病棟24時、本日当直、あらゆる精神疾患寝ずに診ます』(著:駒木爽/発行:三五館シンシャ、発売:フォレスト出版)
――正常ってなんですか?
精神科救急病院で10年以上勤務している精神科医が語る、きれいごとでは片付かない医療現場のリアル。




