新常識 認知症になることを恐れない
ボケとは自分の世界のなかで生きること
長生きすればするほど、認知症になるリスクが上がります。認知症になると、自分でいろんなことが決められなくなります。だから、そのときのことも予習しておいたほうがよいと思います。
高齢者はがんになる確率が高いですし、認知症になる確率も高くなります。そして、誰でもいつかは死にます。この確率は100%です。それが早いか遅いかの違いだけで、ここから逃れることはできません。
一般に、医者は自分が認知症になることを怖がっている人が多いのですが、これは認知症の悪い例しか見ていないからでしょう。
私の外来での経験でも、日常生活がうまくできなくなった親に介護認定を受けさせるために、子どもが親を連れてくることがあります。そこで見た印象では、認知症になった人は、子どもから「最近ちょっと物忘れがひどいけど、怒らなくなったし、いつもニコニコしている」といわれるような「明るい老人」です。
ところが実際は、明るい老人が認知症の外来に来ることはめったにありません。まわりに迷惑がかからなければ、医者に連れて行く必要がないからです。
その結果、病院には認知症の症状がひどくなった人ばかりが来ることになります。そんな認知症患者しか、多くの医者は診ていません。
逆にいうと、医者は明るく楽しそうな認知症患者を診ていないので、人が老いることに対して、勝手な偏見を持っているともいえます。
日本に高齢者が約3700万人いるなかで、介護を受けているのは約15%です。8割以上の高齢者は自立しているのです。その事実を多くの医者は知りません。
クスリを一切飲まないで、おだやかに暮らしている人もいれば、タバコを吸いながら100歳まで生きている人もいます。そうした高齢者をたいていの医者は見ていません。だから私は、医者から健康法を聞いても、あてにならないといっているのです。
五木寛之さんは、「介護してくれる人に罵詈雑言を吐いたり、奇行に走ったり」といった「荒々しいボケかたにならなければ、好ましいボケかた」(五木寛之『遊行期 オレたちはどうボケるか』より)といっていますが、私もそうだと思います。
もうひとつ、ボケていてもニコニコしている人は、まわりの人を幸せにしますし、自分も嫌なことが忘れられます。
そして、いろんな情報からだんだん遮断されるようになるので、自分の世界のなかで生きていくことができます。ボケるというのは、そういうことなのです。
高齢者のなかには、自分がボケて要介護になったら、家族に迷惑をかけるのではないかと気に病む人がいるようですが、自分が何十年も払ってきた介護保険料や税金で世話をしてもらうのですから、そのことを気にする必要はまったくありません。
※本稿は、『死ぬまで楽しく生きる本』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
『死ぬまで楽しく生きる本』(著:和田秀樹/エクスナレッジ)
残りの人生をいかに楽しく、安心して生きるかについてまとめた本です。
自分のために、家族のために。
最期まで「私らしさを失わない」ためのヒントが満載です。





