手術や抗がん剤なしでがんが消えた

「手術、放射線治療、抗がん剤治療なしでがんが消えた」-アメリカトップレベルのがん専門病院、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターが去年報告した治験の結果に世界中で大きな衝撃が走りました。

ある特徴を持った直腸がんの患者49人に「免疫チェックポイント阻害剤」を投与した結果、全員が手術を行わずにがんが寛解したというのです。免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞によって抑えられている免疫の働きを回復させ、自分自身の免疫細胞にがんを攻撃させる薬です。

この報告を受けて、日本でも治験が始まっています。その舞台のひとつは、国立がん研究センター東病院。「MSI-High(エムエスアイ・ハイ)」というタイプの直腸がんの患者に対して、初回治療から免疫チェックポイント阻害剤を投与するという治験です。

 

70代でステージ3の直腸がんと診断された男性(写真提供:NHK)

 

70代でステージ3の直腸がんと診断された男性。がんは肛門のすぐ近くにあり、さらに直腸の表面から奥深くまで浸潤していたため、標準的な治療の場合、腸を切り取る手術が避けられず、その場合、永久的に人工肛門を造設する必要がありました。それが、1年間、2週間に1度、免疫チェックポイント阻害剤の点滴の投与を受けるだけで、がんが綺麗に消えたのです。

なぜこれほどまでに効果が出るのか、そのカギを握るのは、まさに、私たちの体に備わる免疫の力の存在なのですが、メカニズムの詳細については、番組でわかりやすくお伝えします。

 

治療後、直腸は健康な頃の姿に(写真提供:NHK)

 

この「MSI-High」というタイプのがんは、直腸がんでは約3~5%、胃がんでは約5~10%、子宮体がんでは約15~30%ほどといわれています。

国立がん研究センター東病院では、直腸がん以外の固形がんにも治験の対象を広げています。

国立がん研究センター 東病院医長 坂東英明医師
「手術できる段階の患者には、絶対に手術をしなければならないという固定観念みたいなものがあり、治験をスタートさせるまでには時間がかかりました。しかし、例えば直腸がんの場合では、手術では人工肛門などによる生活の変化が大きいですし、放射線治療を行うと子宮などにも放射線が当たってしまうため、将来子どもを授かることができないという可能性もあります。患者さんにとって“優しい”治療をすることが大切だと考えています」