「ものすごく大きな変化だったんですね。今で言う、生成AIの登場みたいな」

「その時代に生きているのも面白かっただろうねえ、きっと」

 エスカレーターに乗り、六階へ移動した。六階の催事場では、北海道物産展が賑やかに開催されていた。あとで寄ろうかな、と思いつつ、吉晴は三島に続いて日用雑貨フロアを歩いた。ときどき、同じイベントに参加しているのだろう、見覚えのある冊子を手にした客を館内に見かけた。薄い仲間意識を感じて、なんだかおかしい。

 日用雑貨フロアの端、トイレへ続く通路の壁に設けられた掲示物コーナーに、セールやイベントの情報を伝えるポスターに混ざって、不思議なポスターが一枚貼られていた。

 大正ロマンを想起させるレトロかつ色鮮やかなタッチで、美しい着物の女性と洋装の女性が、並んで町を歩く姿が描かれている。二人の背後にはデフォルメされた福来屋日本橋本店がそびえている。一見、美術展かなにかの告知ポスターに見える。ただ、「四季衣」というタイトルと、ポスター下部にさりげなく印刷された「大正五年五月一日発行 京都本店修築・東京分店新築落成記念号」の文字が面白い。そしてこのポスターの右下に、謎解きイベントに関連していることを示す雀のマークが入っていた。

「百貨店のPR誌だね。大正時代のものだ。落成記念ってことは、この建物が完成したときの記念号か」

 吉晴は謎解きブックを開いた。指定されたページには、数字と平仮名が並ぶ迷路が表示されていた。ポスターに書かれていた日付の数字をつなぐと、その途中でいくつかの平仮名を通ることになる。ほどよい負荷のある問いを解いていく心地好さを感じながら、迷路を解き、通過した平仮名を並べていく。

「ここって、東京分館だったんですね」

 三島が同じ作業をしながら呟いた。吉晴は紙面に目を落としたまま「そうだね」と相づちを打つ。

「呉服店の発祥は京都だったから、そちらが本店だったんだろう」

「あれ、福来屋って今、京都にありましたっけ?」