「ないと思うよ。郊外に大型商業施設ができて経営が苦しくなったのと、建物の老朽化が理由じゃなかったかな。何年か前に、福来屋京都本店が撤退! ってニュースを見た覚えがある」

「世知辛いですね……」

「日本中の百貨店が直面している課題だと思うよ。――よーし、できた。『かんようしょくぶつのなか』……観葉植物のなか?」

 意外な文言を受け、二人で顔を見合わせていると、近くで同じく謎解きをしていたスーツ姿の男性客が、廊下の端に置かれた高さ一メートルほどのオリーブの木の鉢植えにつかつかと歩み寄った。しばらくそれを見つめ、唐突に木の根元をつかんで一息に引き抜く。

「うそおっ」

 思わずといった様子で三島が声を漏らした。どうやら鉢植えはプラスチック製の偽物で、オリーブの木の根元は土を模した蓋になっていたらしい。男性客は背を屈めて鉢植えの中から紙を一枚取り出した。鉢植えを元の形に戻し、紙面に目を落としながら歩いてくる。

 あれ、と吉晴はまばたきを刻んだ。

 男性客の顔に、見覚えがある。自分のゼミ生――では、ない。けれど、政治経済学部の学生ではなかったか。

「梅木(うめき)くん?」

 三島が彼を呼びとめた。そうだ、梅木克也(かつや)だ。行動経済学の講義を履修していた。寡黙で真面目な学生だった。

 梅木は足を止め、至極驚いた表情で三島と吉晴を見比べた。

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